2020年10月03日

最終聖戦の戦士たち

突然ですが、簡単にレビューしてみようかと思います。

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初代星矢の映画といえば、どれも面白いんですけど個人的感想で言えば

1.『邪神エリス』
設定とキャラクター(エリスや絵梨依)はいいけど、ラストのオリオンのジャガー戦以外のバトルが間延びして感じる。
当時はアニメ誌のスタッフ談話で「ゲストのゴースト聖闘士たちがただのやられ役で終わらないよう気を使った」とあったけど
結局ジャガー以外ただのやられ役になってんじゃん……と、基本敵キャラに期待する節のある私としては
ちょっとがっかりした思い出。(上映時間45分じゃ仕方ないんですが)

2.『神々の熱き戦い』
まぁ悪くはないけどフレイが謎。沙織と初めて会った気がしないとか、なんでアテナのために命を捨てるのかとか、
唐突すぎて感情がついていかなかった初見。(劇中でのドルバルへの台詞からして、アテナが重要な存在と思ってるのはわかるんですけどね)
やはり上映時間の加減ではしょらざるを得なかったんでしょうが。
映画版神闘士たちについては、前回のゴーストで学習したんでまぁこんなもんかと。
余談ですが、映画敵キャラのボスを除いたリーダーは(エリスではオリオンのジャガー、真紅ではカリナのアトラス、最終ではセラフのベルゼバブ)かなり強くて青銅たちを圧倒するのがお約束なのに『神々』のロキだけは星矢にショボいやられ方してたなぁ(笑)

3.『真紅の少年伝説』
映画シリーズ一の大作なのは間違いないんですが、太陽神アベルも存在感凄いんですが、その分見るのにものすごくエネルギーがいる。
コロナの聖闘士ではリンクスのジャオウのルックスが一番好みだったけど、一番出番少なくて残念(^^;)
黄金聖闘士では、テレビ版のアフロディーテの作画が大抵あれだったから、荒姫作画の映画出演を心から喜んだ記憶あり。


そんなわけで、
作画が荒木&姫野コンビでないとかボスのルシファーがショボいとか、色々と評判の悪い『最終聖戦』ですけど
私としては一番気楽かつ気軽に見れる点でお気に入りだったりします。さすがに4作目ともなるとすっきりまとまってる、と思いますし。


ちなみに最初の画像は、今は亡き(多分)レーザーディスク版の最終聖戦の戦士たちのジャケットです。

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帯付き。


『最終』の敵キャラのデザインと総作画監督は直井正博氏でしたが、直井氏デザインのルシファーを荒姫絵にするとこんな感じなんだぁ、と
LD再生機なんて持ってないのに買っちゃったという(笑)
紫龍と氷河が黄金聖衣姿なのもナイスだと思いませんか?w



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各ジャケットイラストを使ったステッカーが付いてました。


余談ですが、04年発売の星矢ムービーBOX(DVD)のブックレットでは直井氏について、
”TVシリーズ第15、36,41,56,86,96話”を担当(『北斗の拳』『SLUM DUNK』にも関わられたそうで)とあるんですが

ナニトールとハーゲンの回(77話・81話)をナチュラルに飛ばしてくれちゃってんの!?
あっシドの回(91話)もスルーされてた


ついでに同ブックレットでは、『最終』のストーリーのベースは"菅氏(脚本)の提案により、ダンテの『神曲』に決定。"とあるんですが

当時のアニメ誌じゃミルトンの『失楽園』てあったんですけど。


当時そう見て岩波の上下巻の『失楽園』買って、友人と映画を見に行くまでに読破しなくてはと退屈なのをこらえて読んだ覚えがあるんだから間違いない。
大体『神曲』って、確かに地獄篇にルシファー(ルキフェル)はいるけど、全体としちゃ脇役でしょうに……
『最終』本編でもルシファーは聖域北の山に出現した自分の根城を”我が暗黒の神殿・伏魔殿”と呼んでるんですが
これ『失楽園』に登場してるんですよ……。

ま、それはともかく私が『最終』好きなのって、ショボかろーが情けなかろーがルシファーが大きいですね。
堕天使の時点で中二心をくすぐって止まない存在ですよ! しかもCVの津嘉山正種さんのボイスが超素敵! この2点で十分お釣りが来ます(笑)

適当に順番を追っていくと、

・黄金聖闘士がいきなり倒される。さすがにいただけない。しかもこれが映画唯一の出番……(苦笑)
『真紅』の時は映画館は笑いと黄色い悲鳴で一杯でして、私が見に行った『最終』でも黄金聖闘士が画面に映った途端「キャ~」でしたが
当然直後に「むごい~!」の絶叫に変わり、以後何も聞こえてこず静かなもんでした。

・伏魔殿出現シーンは素直にカッコいい。

・世界が異変で大混乱、のシーンもアニメらしい無茶ぶりがいい。その後大学生時代にビデオテープを部室に持ち込んで上映会やった時
このシーンが「ありえね~~w」と一番ウケが良かったです。

・ルシファー復活のきっかけになった魔界堕ちになった三神(エリス・アベル・ポセイドン)、何気にアベルお兄ちゃんだけ代表格みたいに
名前連呼されてたのが気の毒だった……。

・沙織さんが伏魔殿に向かい、星矢たちも向かって聖魔天使が登場するシーンまで、
映画唯一TV版のBGM(「聖闘士神話」の重々しいバージョン・アスガルド編録音のもの=M204)が使われています。

・紫龍とか瞬とか、期間的に仕方ないけど使い回しが多いなー。
あとスローンのモアの技とか、皆思ってるだろうけどモロぎゃびり~んやん(笑)

・氷河や一輝がマンネリ打破を図ってるそうで、それはまぁいいんですけど
一番打破すべきマンネリはすぐやられる瞬じゃないのかよ(怒)

・”最終聖戦”らしく、ルシファーに立ち向かう沙織さんは良かったです。
某アニメ事典じゃ「結局人質にされているが」って言われちゃってたけどねー。

・星矢が矢を放ったら、何故か沙織さんを盾にせず射抜かれちゃうルシファー。
ま~それされたら終わっちゃうし、時間の都合には勝てないんでしょうけど。

・サタン像と伏魔殿が崩壊するシーンと、そこを皆で脱出するシーンもお気に入りです。
多分エリスのラストで星矢と一輝がアテナと仲間と絵梨依を放り出して逃げたことへの反省なんじゃない……?w

ラストは聖魔天使たちの元ネタについて少々。

◇熾天使(セラフ)のベルゼバブ(声優・森功至)
サタン(ルシファー)といったら相方はベルゼバブ、ってくらいお馴染みですね。
参照リンク
最後に残る敵キャラとしては非常にそつのないキャラだと思います。

熾天使は天使の最高位。人間の前に現れる時は六枚の翼と四つの頭を備えるという。


◇智天使(ケルビム)のアシタロテ(声優・難波圭一)
ルックスと声優さんのおかげでフレイにダブらんこともない(笑)
キラー・ファングド・コブラで紫龍に飛び掛かるシーンが結構好きw

アシタロテ(アスタロト)はソロモン72柱の魔王の29番目とされる。元は女神だったそうですね。

智天使は天使の第二位。四枚の翼と四つの顔を持ち、神の御座を運び神の戦車を駆る者とされる。


◇座天使(スローン)のモア(声優・古川登志夫)
一番天使らしいといえばそんなルックスですね。
モアだけ該当する悪魔の名前を見つけられなかったので、元ネタなしのオリジナルなのかなと。

座天使は天使の第三位。大きな車輪・または多くの目を持つ者として表されるという。


◇力天使(ヴァ―チュー)のエリゴル(声優・山口健)
対峙した瞬が凄まじい殺気のため「この人が天使なんて……」と思ってたけど
見た目からして天使というより、道化か仮面の変質者にしか見えない(お~ぃ)w

エリゴル(エリゴールまたはエリゴス)はソロモン72柱の魔王の15番目とされる。
説明文を見ると魔王つか単純に有難い存在としか思えないのですが(^^;)

力天使は天使の第五位。英雄や善のために奮闘する者に結び付けられることが多いという。


参考文献『天使の世界』マルコム・ゴドウィン著 大瀧啓裕 訳 1993年12月30日第一刷発行 青土社


参考URL God Birdさんより

ソロモン七十二柱の魔王

posted by 鷹羽めいり at 23:13| Comment(0) | 感想 | 更新情報をチェックする

2020年06月06日

柴田昌弘『回転扉』

私の好きな双子漫画であり、バッドエンド・鬱エンドはそんなに好きではないんですが
たまに読み返したくなるバッドエンド漫画でもあります。(花とゆめコミックス(白泉社)は1985年発行)

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3作完結で、東京のアパートで暮らす大学生・殿谷周二(とのや しゅうじ)が
ある雨の夜追われていたところを助け、しばらく共に暮らし想いを寄せることになった美しくお淑やかで心優しい少女・楢川彩(ならかわ あや)が持っていた恐ろしい秘密に巻き込まれ……という内容。

バラしてしまうと秘密とは、彩は双子の姉である楢川香織の死霊にとり憑かれていた、というもの。

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2人は木曽山脈(中央アルプス)中に存在する、元隠れ里で世間一般との交渉を断っている子々母村(しじもむら)の村長の娘。
世間と交渉を断っている故村人同士で婚姻を続けた結果、濃度の高まった血により異常性格者として誕生した姉の香織は
殺人や村人の安全を脅かす行為を繰り返し、ついには村人たちに悪魔憑きとして殺害されたのですが
その後"怨霊"と化した香織は妹の彩にとり憑き、彼女が眠っている間に自分を死に追いやった村人たち7人(彩の婚約者で香織も惹かれたという男性・叔父一家4人・村長夫妻である両親)を次々に惨殺。両親を殺した時点で彩も村人に殺されそうになり、彼女は東京へと逃げてきました。

子々母村からは刺客となった男たちが後を追って来て、彩が周二に匿われていることを突き止め彼女を暗殺しようとしたのですが
追い詰められた彩は恐怖で失神、香織との入れ替わりが起こり香織はその場にいた村人2人を返り討ちにして姿を消しました。
うちの一人・曳野和美(ひきの かずみ)に彩の秘密を聞いた周二は姿を消した彩を協力者の心理学助教授(当時の呼び方)と共に探すのですが
手掛かりは皆無のまま1年半が過ぎ、助教授も匙を投げてしまいます。一方彩は自分が姉に憑かれた事を知りますが
自分よりずっと器用で頭も切れて、かつ復讐に憑かれた姉の怨霊をどうすることもできませんでした。

2人がようやく再会する最終部『回転扉パートⅢ・冬の揺籠』では、
子々母村から東京にやって来た曳野和美の妹ちはや(16歳)が周二を訪れ
彩が香織に乗っ取られ、完全に入れ替わるのも時間の問題であることを話し
彩を救うためにはもう彼女を死なせるほか手はない・そのためには彩も内心愛している周二に協力してもらうほかはないという話になってしまいました。

ちなみに、村人たちが彩の居場所を突き止められるのは、村に強力な霊能者がいて香織が覚醒するのを察知できるから。
周二と上の助教授も1年半の間何人もの霊能者を訪ねましたが、名前しか手掛かりがないのでは探すことも、当然除霊もやりようがないと言われただけでした。

あるビルの屋上に彩を呼び出し、周二はやっと彼女に愛していると告げることができました。
口付けを交わせた2人でしたが、背後からジャックナイフを構えて迫るちはや。
「許して彩さん!」
しかし周二は止めろと叫び、彩と位置を入れ替えて自分が刺され倒れてしまいます。
脳裏をよぎっていたのは、霊能者たちの「本人がいなければ除霊のしようがない」という言葉から連想した希望。
本人さえ見つかれば、悪霊(香織)を祓うことができるかもしれない、彩を救えるかもしれない、という。
愕然とするちはやの前に、
「こういうことだったのかい……」と、笑いながら香織が立っていました。

ストーリーの最終ページで流れる周二の独白。

「最後の一瞬 おれの心は最悪の方へゆれた……許してくれちはや……俺が甘かった……彩の魂を救うことは もう――」

画はビルの屋上でナイフを背に突き立てられて倒れている周二と、その遥か下の地面に倒れ血塗れで絶命しているちはや。


というわけで、主人公はおそらくこの後死亡、ヒロインは救われぬままこの世から消え
妹の体を手に入れた香織は村人に対し逃れようのないデスゲームを仕掛けるであろう……という、どこにも救いのないバッドエンドです。
コミックスの”作品かいせつ”には”傑作回転扉は語る、「光が影を食するように影もまた光を喰らうのだ。」と。”
そんな一文が載っていますが、最近この作品を再び読み返すようになって考えてみると
実は作中のこの部分が「正解」だったんじゃないかなぁ、と。

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黒髪の少女がちはや、叫んでいる青年が周二。

「君たちが追いつめさえしなければ あのまま彩は彩のままでいたかもしれないんだぞ!」

というのも、彩が周二と暮らしている多分数週間の間だけは香織は一切登場せず、おかげで周二が彩の秘密に気づくことはなかったからで。
曳野和美の末期の話によると、「彩が眠っているとき 意識が薄れたとき 香織は彼女の肉体を支配し 完全に人格が交代してしまうのだ」
そのとおりに子々母村に居た時は、香織は彩が寝ている間に動き出し妹の婚約者・親戚・両親を殺して回っていました。
自分を殺した村人全員に復讐するのが目的の執念深い香織が、彩が眠る度人格交代できるなら村に戻ろうとするなり何なり、引き続き復讐のための行動をとってもおかしくないんですが、周二と暮らしている間全く出てきていないのは何故か。
こういうことでは? と推測します。
彩が精神的に安定している間だけは、さすがの香織も妹の体を乗っ取ることはできなかったのではないか。

子々母村の連続殺人について、彩は周二にこう語っています。
「最初の犠牲者 姉 香織は行方不明 その3日後 婚約者松代清司は鎌でのどを裂かれて……

叔父夫婦の死は放火でした この火事で10歳と6歳になるいとこも焼け死にました…… そして父と母……たった一週間くらいの間に

8人もの人が殺されたんです」

曳野和美は香織の殺害は村人全員の合意のもと、彩にだけ隠して行われたと語りました。
つまり彩だけは姉が村人に殺された事実を知らず、姉は行方不明になったと思っていたわけです。
心優しい彩は村人が恐れ嫌う異常性格者の姉香織を、それでも子供の頃から慕い庇い続けてきた描写があります。
姉が姿を消し、そしてそのことについて訪ねて回ったとしても誰も彼女に答えてくれない状態は
彩にとって相当なストレスになったことは想像に難くありません。
不安定な心を抱えた彩は、香織にとっても乗っ取りやすい好都合な状態にあったのではないでしょうか。
東京に出て最初に香織が現れたのも、村からの刺客を認め殺されると怯えて周二の部屋の天井裏に隠れ、それを気づかれて失神した、という
ストレス満点状態の直後でしたし。
そして周二と別れた後の彩は、香織との交代率がどんどんあがりちはやが来て周二に語った時には

「彩さんと香織の意識が交代する割合は 彼女があなたと出会った頃は8対2くらいでした…それがいまでは6対4をこえるほどになってるんです!」

と、なってしまってました。
子々母村は村の安全と平和を守るという口実の下香織を殺害し(彩の話によると、村の掟では悪魔憑きと判断された者は火あぶりにされるとのことで、殺害方法の直接の言及や描写はないんですが、多分香織は生きたまま焼かれて死んでいったんではないかなと。)
とり憑かれた彩もひたすら躍起になって殺そうとするのみでしたが
上に書いた説が真実なら、そのただ抹殺すればいいという考えと行動こそが『回転扉』の救いようのない結末を生んだのではないかと思えるのです。

 
……と、ひたすら暗い話だったので、ラストに『回転扉』唯一の癒し要素? というべきオマケをば。
この漫画のレギュラー・つまり3作全てに登場したのは主人公の周二とヒロインの彩だけ(香織は第一作では和美の話に出るのみ)……かと思いきや、他に脇役ながら全作出場を果たしたキャラたちがいるのです。

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彼らは周二と同じ大学の学生たちで周二の友人。
第一作の『回転扉』最初に登場したシーンは、周二のアパートに麻雀をやりに来たところ。
外は大雨なのになぁ…、結構ハマってるみたいで第一作の中ではこの後また麻雀やってます。

彼らの中で名前が判明しているのは一番大柄で髪モジャ・髭ありの"落合"だけ(しかも苗字のみ)なんですよねー。しかし、

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香織が周二の部屋で和美ともう一人の村人を殺害し、警察が来た後のシーン。

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第二作『回転扉パートⅡ 赤い夢魔』ラストで周二の誕生日を祝って飲み歩いてるシーン。ええ友達や……。

しかし悲しいのは、この時周二は酔ってるのもあってすぐ側を彩とすれ違った事実に気づいてないってことなんですよね。

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まぁそうだよな、っていう常識的な態度。この後も馬鹿馬鹿しい! と周二を諭す常識的なシーンが続きます。

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最終部『冬の揺籠』で曳野ちはやが登場したシーンにて。

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これが彼ら周二の良き友人たちの最後の登場シーン。この後周二がビルの上で見つかって、彼らはどう思ったことでしょうか。
いかん結局暗くなっちゃったじゃないか(^^;)

ひとつ印象に残っているのは、最終部冒頭で落合たち3人が周二のアパートを出ながら語ってるシーンのセリフ。

「だいたい いまだにここ引っ越さねえてのが尋常じゃねーよなぁ」

「てめえの部屋で人が殺されたなんてったら 即逃げ出すね 借金してでも」

……周二の部屋で徹夜マージャン済ませた後なんだよなぁこれ……。
(周二が逃げ出さないのは大家さんに出ていくならそれなりの補償! って言われたから)

人が殺された部屋で平気で泊りがけで麻雀やってる君らの剛勇ぶりもなかなか。って思いました。
posted by 鷹羽めいり at 23:56| Comment(0) | 感想 | 更新情報をチェックする

2020年05月05日

『海の闇、月の影』と私

昔々、通った学校にて女子生徒の間で回し読みが流行っていた篠原千絵の作品です。(以下、海闇)
双子ものの王道であり恋愛テーマの少女漫画の基本もしっかりと抑えてあり、
かつノンストップホラーアクションサスペンスでもある盛りだくさんの作品です。
最近この作品のことをふと思い出したのは、(2019~)2020年の新型コロナウイルス禍の中にあって
私が多分初めて出会った"ウイルス"というものがフィクション内で大きな役割を担っていた作品だったからかもしれません。

作中人物の一人、ジーン・ジョンソンがこう語っています。

ジーン「あなた方は細菌と呼んでいましたがこれはウイルスですね」
小早川流風(るか、ヒロイン)「細菌とウイルスって違うの?」
ジーン「はっきり違いますよ ウイルスの方が遥かに小さく 遥かに厄介だ
現在細菌による感染症は抗生物質で大半が治療可能になりましたが ウイルスに関してはほとんどお手上げというのが現状です」
(※現在コミックスが手元になく、記憶頼みで書いていますのでこの会話文含め以後間違いが存在する可能性も高いですがご容赦ください。)


1.ウイルス「LUNA-2」

作中で全ての元凶となった、かつて古代日本で流行った可能性があるらしいウイルスは(古墳内に封じ込められていた)
その後専門家によって「LUNA-2(ルナツー)」と命名されます。
その特徴は

・最初、ハイキング中古墳内に迷い込みウイルス入りの空気を吸い込んだヒロイン小早川流風・その双子の姉流水(るみ)と
同じ陸上部の女子部長、部員2名のうち小早川姉妹以外は直後に突然死

・感染者の流水はこのウイルスによって宙に浮く(走る)、物体を通り抜ける(応用で人間の体を突き抜けたり脳を握り潰したりして殺害できる)という超能力と強大な腕力を得、かつ邪悪な性格に変貌する

・「LUNA-2」は月齢に影響されるらしく、双子の能力は満月時に最強、新月時に最弱となる

・流水の方はキス(噛みつき・のちには血液を多くの人間に注射)によって感染させ、人間の意志を奪い操り人形にできる

・双子の流風はそれを防ぐ抗体を持った(後に彼女の血液から治療薬が開発される)

・「LUNA-2」は熱に弱いが変異した後は滅するのに数百度の温度が必要になる

・最終回のラストシーン付近で感染源の流水に関わったものは自宅・私物すべて焼却処分となった


上記の登場人物、ジーン・ジョンソンは詳細は忘れましたがかなりの専門家で治療薬を開発、かつウイルスを変異させて別な能力も作ってます。
ジーン本人は悲しい過去持ちの悪役・最初の中ボスwみたいな立ち位置で途中で死亡しますが最後に「LUNA-2」治療薬の処方箋を5分割して
自分が作り出した新たな能力者(ジーンが変異させたウイルスの感染者)の元に送り付け、
流風と流水はそれを探しつつ対立することになります。
新たな能力者たちは知らない間に意志と関係なく感染させられた者と、自ら志願して感染した者に分かれてました。


2.「LUNA-2」の感染者=能力者たち

・真琴
スオミ(フィンランドの意味。ちなみにフィンランドはジーンの出生地)というペンションの経営者夫婦の一人娘。多分未就学児、推定年齢3~6歳ほどか。
物体を別の物体に埋め込める能力を得ている。

・水凪薫(みずなぎ かおる)
男子大学生。交通事故で担ぎ込まれた病院に運悪くジーンがいて感染させられた。得た能力は物体を浮かせて操る力。
ぶっちゃけ単なるサイコキネシス(念力)ではw
その能力が退院後暴発し、結果火事が起きて家族(両親と多分妹)、付き添いに来てくれた恋人を死なせ
「LUNA-2」に感染した双子が元凶だと小早川姉妹を敵視、流風の周囲の人間を何人も殺害するがそのうち流水に魅かれ出す。
しかし最終的には流水にはめられ、彼女の行く末を案じながら電車に撥ねられて死。薫と流水がくっついてればこの後の悲劇は防げたかもしれないのに悲しい。

・京子
苗字忘れましたが、小早川姉妹の思い人(陸上部の先輩)当麻克之の元カノで医学部の学生だったかな。
ジーンに自ら感染させてくれるよう申し出た。得た能力は体の各部を切り離して操る力。目玉だけでも飛ばせるので結構不気味でしたw
何だかんだあって流風と克之の仲を認め身を引くが、最後は流水に殺される。

京子の場合は、能力者は誰?のミスリードとしてバイク乗りの青年とその病身の弟が巻き込まれましたが
(京子も男が乗るような大型バイクに乗ってた)最終的には助かったのにほっとしました。
海闇ってとにかくよく人が死ぬ話で、名ありも名無しも大量にあの世逝きになるんで……
考えたら能力者絡みで死なずに済んだのってこの兄弟だけだったような。

・シン
ジーンと出会って面白半分に自分の飼い犬を感染させた車椅子の少女の飼い犬がシン。
名前の由来はさそり座アンタレスの中国名「心(しん)」だそうで。
動物を操る能力を持つ。もはやウイルスの定義から外れすぎててネタ切れ?って気もする(笑)
後に海闇の特集だか画集だかの作者コメントを読んだら、ノリで犬を能力者にしたってありました。
飼い主の少女は流水に殺され双子への復讐に燃えるが、結果的には流風の協力者みたいになった。
最後の処方箋の持ち主である後述のイアンとクリスとの戦いの際、多分イアンに撃たれ
死ぬ姿を見せたくないと流風から離れ、街角で飼い主が迎えに来てくれた幻を見ながら死んでいく。号泣。

・イアンとクリス(クリスチャン)
ある大学を乗っ取って小早川姉妹に勝負を挑むジーンの従弟で双子。ジーンの出生地であるフィンランド・カレリアの某村は双子の出生率が80%を超え、彼の両親・妹・そして従弟は全て双子である。ジーン本人も受精卵の段階で双子だったが途中で融合したので並の人間に比べて能力が2倍ってことらしい(ちなみにこの調査を行ったのは旧ソ連の機関。ジーンは少年時代徴収を逃れるため家族と逃げようとしたところをソ連の国境警備兵に家族を皆殺しにされたという過去を持つ。語ってしまった)。
これまでの能力者すべての能力を持つというお約束のステータス。ジーンを殺した双子を恨み彼女らの姉るい子を殺害するが、クリスは銃を持った双子からイアンを庇って死亡、イアンは双子の能力で殺された。
能力者全滅後は、流風と流水の最終決戦へ……。


3.ちょっとツッコミたいこと

昔はさほどツッコミ癖もなかった私がどうにも釈然としなかったのが、最初の処方箋を持った能力者真琴と流風との一件。
真琴と出会ったペンション"スオミ"で起こった事件もなかなかのホラーで、9人の人間が1日足らずで殺されます。下手人は子供の真琴。
この時ペンションにはオーナー夫婦(真琴の両親)とペンション常連のある大学サークルのメンバーがいたのですが
真琴は「怒ってばっかりのパパ」=オーナーを庭の丸太に埋めて殺害、泣き叫んで面白かったとサークルの大学生たちも皆殺し。
ペンションを訪れた流風と克之以外で生き残ったのは真琴の母親だけになりましたが、怯え切った母親はママ、お腹すいたよと泣き出した真琴に対し「近寄らないで化け物!」と物を投げつけて逃亡。
追いかけた真琴は腹立ちまぎれに母親も地下室の壁に埋めてしまいました。その場に来てた流風は力づくでも止めろよ。(流水は殺しておしまい!と煽ってたけどな)
で、その後流風は優しさで真琴の心を開き、真琴も新しい仲間として連れて行こうとするのですがその時の台詞が
「そうよね 真琴ちゃんはただ抱きしめてほしかっただけなのよね 愛してるって 言ってほしかっただけなのよね」


いや~、さすがに何やっても愛されると思っちゃいけないと思うよ。


それと流風は真琴に対しては同情を寄せてますが、我が子とはいえいきなりあり得ない能力発揮して夫はじめ人を次々と殺したのを見て
恐怖と混乱のどん底に叩き込まれた真琴の母親に対しては一切同情を寄せず
母親なんだから「逃げないで! 抱きしめてあげてよ!」と叫び、それが当然だと思ってるみたいです。いや無理だろ。
さすがに原作者もこれは問題アリと思ったのか、真琴は最後には流水に溺死させられました。怒る流風に対し言い放つ流水。
流水「あんた あの子が何人殺したかわかってるの? 9人よ9人! しかも自分の両親も含めて」
流風「真琴ちゃんは何もわかってなかったのよ!」
流水「子供はいつまでも子供じゃないんだよ いつか自分のしたことがわかる日が来る 自分の母親に疎まれ拒否され そして殺した
そんなこと理解する前に死なせてあげたのは あたしの恩情だと思わない?」

正直、流水のが正しいと思います。過激な考え方なのは確かですけどね。
それに流風は真琴に同情するあまり? 彼女が殺した人たちをわざとスルーしてるような節がありますな。


4.不幸キャラ列伝番外編 後輩の真理子

海闇初期に登場したキャラクター。小早川姉妹と当麻克之は陸上部所属だったが同じ部の後輩。
放課後部活動中に流水に感染させられ操り人形と化し、
その必要があったかどうか疑問だが流水の命令(克之さん以外生かして外に出さないで!)により学校にいた先生方を殺害、
人殺しになってしまった(ただこの時流水の操り人形にされたのは彼女だけでなく陸上部員全員ですが)。
その後自分の意志と関係なく流水が別の学校を乗っ取る野望のため転校させられる(これも陸上部員全員みたいですが)。
さらにその後、ジーンが治療薬を開発した際実験台となって正気を取り戻した、は良かったのだが
ジーンはその頃には集団感染計画を実行に移しており(流水とジーンは共に世界征服の野望を抱いてました)、
感染しても自分の指示に従わない人間・流風の抗体を持った人間を焼却処分していた。
そして真理子は泣き叫びながら放り込まれた高温焼却炉の中で骨も残さずこの世から消えたのだった……。


昔々、不幸キャラクター列伝というあるサイトのコンテンツがありまして。
のび太とドラえもんのために「ホラのび」呼ばわりされることになったのび太の先祖とか、大人の事情でなかったことにされたヤッターマンメカとかが紹介されていてなかなか興味深い内容だったのですが、
彼女真理子も入れてあげていいんじゃないか、とか思うのです。


海闇、物語としては最後流風が流水を倒し処方箋は完成されることとなり、
流風は流水の思い出を抱いて克之と共に生きていく……と、しんみりと奇麗に完結し
「やがてこの出来事は人々の記憶から浄化されていくだろう」となってますけど
冷静に考えるとこのウイルス騒ぎ、感染被害も相当なもんだし死者も相当な数に上るしで
政府がマスコミに箝口令を敷いたとしても、生き残りの流風が平穏無事に生きていくのはかなり難しいんじゃないかと思えてなりません。人の口に戸は立てられませんしねぇ……。


今後気が向いたら、私の好きなある双子もの漫画について語るかもしれないです。

posted by 鷹羽めいり at 23:54| Comment(0) | 感想 | 更新情報をチェックする

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